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2巻ネタバレ注意。
そして一部引用注意。さらに捏造注意、っとな。

絵師×DR!!で罪歌ネタを書きたかったんですけど、まだまだ道のりが長そうなのでフライング。
そして途中で一回切りました。
長くなったのと、あと途中でデータ消えたりしたら正直俺泣くから・ω・`
いつもと違ってワードで書いてるんでなくブログに直接書いてるので。

臨也がうざいのは仕様です。


「あーもう、鬱陶しいなあっ!」

暁兎は自分を追ってくる赤い目をした人間達を見て、そう言った。
言いながらも、走る足は止めない。
そうして、走って、逃げて、跳んで、上って、隠れて、降りて、―――

どのくらい繰り返しただろう。もう覚えていない。そもそも数えてもいない。

よく分からないが、「罪歌」とかいう刀が、暁兎を居候させてくれている平和島静雄を狙っていることは動物達から聞いていたし、チャットでも見た。
しかし、いつから暁兎もターゲットに含まれたのだろう――少なくとも、家を出る前まではそんな情報はなかったのに。

暁兎が狙われているのは、暁兎が平和島静雄との繋がりが深いからだろうというのはなんとなく予想できるので、そこは別に疑問ではないのだが。

「―――ああもうっ!」

残念ながら、今の暁兎は一人だ。
味方なんて誰もいない。動物たちもいない。
何故なら、この都会の町にいる動物なんて、動物園にでも行かない限り数も種も限られているし、その数少ない味方であった子達は暁兎を庇って斬られてしまったからだ。
もともと戦闘向きではない、どちらかといえば情報収集向きの子たちしかいなかったのだから、できることなら逃げて、情報を与えてもらえた方がおそらく暁兎にとってプラスとなっただろう。残念ながら、自然からかけ離れたこの環境で育った動物たちには、かつての学園で共にいた動物達のような強さが身につくことはない。

此処が、大きな山や森があるような場所だったら、また話は別だったが。
無いもの強請りをしたところで仕方がない、と暁兎は思考を切り替えた。とき、

「やあ」

軽く手を上げて声をかけてきたのは、折原臨也だった。
さんざん気をつけろと言われている要注意人物の出現に、よりによってこんなときに、と舌打ちしたくなる。

「折原さん、悪いですけど、今ちょっと――」
「分かってるよ。追われてるんでしょ?」
「ッ!?わ、ちょ」

ぐいっと手を掴まれ、走り出される。

「な、お、折原さん!?」
「いーからいーから。こっちこっちー」

言いながら進む臨也の足取りには微塵も迷いがない。

暁兎はしばらく考えて、臨也に連れて行かれるままについていくことにした。
情報屋というくらいだ、逃走ルートなんかにも詳しいだろうし、自分ひとりで逃げるよりマシかもしれない。

(ただ、人間性は最悪らしいから、借りは作らないようにどうにか気をつけないと―――)

この状況なら、ただ“臨也が無理矢理つれてきただけ”だ。“暁兎が臨也に助けを求めた”わけではないし。

そんなことを考えながら、腕を引かれ辿りついたのは、誰もいない廃工場だった。
周囲には人の気配は見事にない。どうやら、追手はまだ追いついてはいないようだ。

この選択は正解だったかな、と暁兎が一息ついた。そのとき、

「人間ってさあ、ちゃんと目で見て認識してるのって、よくて10%程度なんだってさ」
「え」

唐突に話し出した臨也の方を暁兎は思わず振り返った。
大分走った気がするが、臨也もあまり疲れた様子ではない。どうやら池袋の自動喧嘩人形と殺り合っているだけのことはあるようだ。情報屋だとか聞いたから、頭脳労働専門かと思いきやそんなことはなかったらしい。

「不思議なものだよねえ、俺達の目にはこんなにも多くの物が映っていて、その全ての情報が脳に送られていそうなものなのに、その大部分は知らない間に切り捨てられているって言うんだから」
「…折原、さん?」

急に一体何を、と訊こうとした暁兎の声は、つらつら連ねられた臨也の言葉によって遮られた。
追われているはずのこの状況で、何が楽しいのか口元に笑みすら浮かべながら、彼はその唇から止まることなど知らないとでも言うように言の葉を連ねて続けて繋げて重ねて爪繰り紡ぐ。

「存在そのものに興味関心が無ければ、視界に入っていようと認識されることはない。だからこそ認識されていなかった空間は本人の都合のいいように作り変えられて、改竄される。つまり誰かが白と言えば白だと思うし、黒だと言えば黒だと思ってしまうわけだ。ありもしないものを“あった”と思い込むことも、あったはずのものを“なかった”と切り捨ててしまうことも、その空白の存在を知っているモノは与える情報でその人物の記憶を好きなように作り変えられる。なかなか面白いと思わないかい?」

何が言いたいのだ、と暁兎は眉を寄せた。

「たとえつい一秒前まで話していた相手が全くの別人に変わっていたって、その入れ替わる決定的瞬間を目にしていなければほとんどの人間は気付きもしないんだよ?薄情な生き物だよね!まあ、俺は人間のそういうところも愛してるんだけど」

両手を広げ、舞台でしゃべっているかのように大げさな身振りで語られ、暁兎は適当に生返事を返した。話を真面目に聞け、なんて言って怒るかもしれないかと思ったけれど、そんなことはなく。
暁兎の返答なんて興味なんてないというように、臨也は勝手に喋り続けた。
昆虫の足をもぐ無邪気で残酷な子供のような、歪んだ好奇心を孕んた瞳に暁兎の姿を映して。

「だから、すっごく興味あるんだよねえ」
「シズちゃんが罪歌の子になった君に気付けるのかどうか」

その言葉を理解した瞬間、思わず暁兎は得体の知れないものを見るような目で臨也を見た。

「暁兎ちゃんがシズちゃんにとってさして重要な位置を占めていないのなら、アイツは暁兎ちゃんが暁兎ちゃんでないことに気付けない。でも、暁兎ちゃんはいつもシズちゃんの傍にいるから、特に怪しまれることもなくザシュッ

臨也は満面の笑みを湛えそう言った。

「暁兎ちゃんがシズちゃんにとって大切で重要な位置にいるのなら、アイツは暁兎ちゃんが暁兎ちゃんでないことにすぐ気付く。でも、そんなに大事なら、あの化物のくせに臆病なシズちゃんに暁兎ちゃんを傷つけることなんてできるわけがない。だから抵抗されることもなくスパッ

臨也は満面の笑みを湛えそう言った。

じとりと、背筋に嫌な汗が流れたのを暁兎は感じた。

「いい考えだと思わない?俺っててんさーい」
「…もしかして、この場所の情報を流―――ッ!?」

そのとき暁兎がとっさに身を引いたのは、完全なる反射行動だった。
ぉん、と鋭い音で空を裂いたのは、勢いよく振るわれたナイフ。

「あはははは!まさか今のをかわすとは思ってなかったなあ!腕の腱切るつもりだったのに」
「折原さん…話には聞いてましたけど、ほんっとうに最低以外の何者でもないんですね」

咄嗟にかわすことができなければ、今のように手の甲を軽く掠める程度ではすまなかったかもしれない。
忍びの学校で身についた習性に感謝しつつ、暁兎は斬られた傷から流れた一滴の血を舐め取り、臨也を睨みつけた。服に血がついてしまったりしたらどうしてくれる。

しかし、臨也は未だ余裕そうな表情でナイフを弄んでいる。おそらく、完全に不意をついた彼にとっての会心の一撃であっただろう攻撃をかわされても、平然と笑っている。

なにかおかしい、と暁兎は思った。
暁兎だって弱くはない。さきほどのように不意をつかれたりしなければ、臨也くらいのレベルならおそらく互角くらいには戦える。そして、さっきの様子を見ていた臨也にもそれは分かっているはず。なのに、どうして。

(もしかして、もう罪歌に乗っ取られた人たちがこの辺に集まってきてるとか…?いや、それだとこの人も危険だし、じゃあ自分だけ逃走ルートを確保――でも、どうやって)
「罪歌ってさあ、刃物なんだよ。知ってる?」

笑顔のまま話しかけてきた臨也からじりじりと距離をとり、同時に周囲の気配を探りながら、暁兎は声を返した。

「…ええ、まあ。知ってます」
「へえ、知ってたんだ。君ってどこからそういう情報手に入れてるのか興味あるけど、まあ今はそんなことはどうでもいいや。それでさ、“罪歌”である刃物に斬られたら罪歌に乗っ取られちゃうワケ。それこそほんの1ミリのかすり傷でもね」
「そうらしいですね」

何が言いたいんだこの人。この状況で罪歌の情報を暁兎に渡して一体何の得がある。
ぐるぐる思考を巡らせながらも、警戒は緩めない。張り詰めていく緊張感。

ぴりぴりした空気の中で、あまりにも場違いに。
臨也は、明るい声色でこう言った。

「だから、おしまい!」

「…は?意味が分からないんですけど」
「だから、おしまいだって。だって、」

このナイフも、ちょっとした手を使って手に入れた「罪歌」の1つだし。


悪戯が成功した子供のように、純粋な邪気を含んで告げられた言葉に、

(―――な、)

思考が、凍りついた。

(ちょっと待って、だって、掠っただけ、でも血が、駄目だ、たとえ1ミリのかすり傷でもアウト―――)

じわり、じわりと。
声が。
斬られたその場所から。
ゆっくりと。
じっくりと。
侵入するように。
侵食するように。
声が、



から
、好き、好
してる】【とて
人が好きよ】【野暮な事聞かな
【誰が好きかなんて悲しい事を言わな
う、違うわ!私は人間がみんなみんなみんな

好きかって?暮なこと聞かないで! 全部よ
雄】【愛したいの愛さなくはならないの】【今度こそ失敗な
きよ、大好き、だからあなたも私を愛して】【平和島静雄【許さな
りないわ】【好きよ、大好き】【だから愛させてもっともっともっともっともっ
よだってずるいわだって私だって愛されたいのにでもいいの私は貴方も愛しているからあら愛に定義を求めるのいけないわそんなことはする侮辱よ定義なんていらない唯一つだけ言葉があればいいのしてる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるしてる愛してる愛してる愛してる愛してるしてる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛しる愛してるしてる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛して愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛、―――

意識をキャンバスに例えるのなら、さながらそれは油絵の具のように上から重ねられて重ねられて重ねられて重ねられて重ねられて。好き勝手に分厚く乱暴に全てを塗りつぶし、侵食していく。
そ し て 、 ブ ラ ッ ク ア ウ ト 。

 

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